いつの間にか、彼は遠い存在になっていたんだと思う。
それに気がついたのは、あまりにも遅すぎたけど。
中学の卒業式。
彼のあだ名はいつの間にか無くなっていた。
「ダメツナ」とは、誰も呼ばなくなっていた。
今、彼は一人でいままで過ごしてきた並盛中を見ている。
いつもそばにいる2人はいないらしい。
「綱吉君、卒業おめでと」
「あ、ちゃん」
彼は私に気付くと、おめでとう、と返事をする。
やっぱり、と心の中で軽くつぶやく。
彼は、この3年の間に穏やかになっていた。
そんなこと言ったら、まるで今までが
穏やかじゃないみたいだけど…。
私が言いたいのは、もっと、こう…。
「綱吉君ってさ、変わったよね」
「え…?」
「なんって言えばいいのかわかんないけど…」
「そっか…」
そう言った彼の顔はなんだか悲しそうだった。
なんでかは、わからないけど…。
向こうでは他の卒業生たちがわいわい言ってる。
私と綱吉君はそれを遠くから見つめる。
「私と綱吉君ってさ、ずっとクラス同じだったじゃん?
最初は、みんなにダメツナって言われてたけどさ…
綱吉君は、それを変えたよね」
「…そうかな?オレ、なんもしてないよ?」
「してなくっても、オーラが変わったていうか…」
雰囲気が変わった、みたいな?と私が続けると
オーラに雰囲気、かぁ…。と綱吉君は苦笑する。
やっぱり、彼はとても大人になってると思う。
今、ここから同学年の人たちを見る目も
落ち着いていて、見守っているような。
そんな、かんじ。
「…ちゃん、」
「ん?なぁに?」
「実はさ、オレ、近い将来外国行くんだ」
「…え?」
ぐわぁん、と。
心の奥が揺れた。
「詳しくは言えないんだけど、やることがあって」
「…日本に、帰ってくるよね…?」
「ごめん。正直、わかんないんだ」
「…そっか…」
きっと私は、こうなることを分かっていたんだ。
いつか、彼が遠くなってしまうことを。
だから私はある一言を、いつまでも、約3年経った今でも言えない。
心の奥は、まだ揺れている。
「ねぇ、ちゃん」
「…うん?」
「オレは、この3年間をきっと忘れないよ」
「…?」
「いろんなことがありすぎて、全部覚えきれないけどさ。
でも、絶対に忘れないこともたくさんある」
「…1年の時の体育祭とか、あと、応接室に乗り込んだこと?」
「え、知ってたの!?」
参ったなぁ、と笑いながら言う綱吉君。
は心の中でこっそりと呟く。
そりゃあ、知ってるよ。
だって、あんな傷だらけで帰ってきたんだよ?
忘れるわけがない。
とっても、心配したんだから。
「まぁ、いろいろあったしさ、楽しかったよ中学生活」
「うん…」
「でも、一つだけ、後悔があるんだ」
向こうで、こちらに向かってくる人物が見える
獄寺君と山本君だ。
綱吉君を迎えに来たんだろうな。
誰かが、このあと山本君の家で
卒業パーティーをやるって言ってた気がする。
…あぁ、もうすぐ行っちゃうんだ。
もう一生話せなくなる。
でも私に、あの一言を言う勇気はもうない。
だって、結果はわかっている。
そう確認すると、心の揺れはなくなる。
もう、諦めてしまった。
「あ、もう行くね」
「うん。…元気でね、綱吉君」
笑顔で私は返事をする。
だって、最後くらい笑顔でいなくちゃ。
いつまでも、彼の中で私の笑顔が残るように。
私のことを思い出すとき、笑顔の私を思い出してくれるように。
「ねぇ、聞きたくない?オレの後悔」
「え?」
「好きな人にね、告白が出来ずじまいなんだ」
心がずきんと痛む。
彼の、綱吉君の好きな人…。
諦めたはずなのに、まだ、痛むなんて。
どれほど、彼のことを諦めれないのだろう。
そんなことを思っていると、心に言葉が落ちてくる。
優しくて、悲しい雫が心に降ってくる。
「オレ、好きなんだ。ちゃんのこと」
「…え?」
「でも、もう遅いよね。残念だなぁ」
それじゃ、バイバイ、と言って、彼は行ってしまった。
私はその場に立ち尽くす。
彼の雫が心に染みてくる。
「…うそ、でしょ…?」
ぺたん、と地面に座り込む。
今更になって、涙が出てきた。
後悔がどんどん湧いてくる。
でも、もう遅い。
遅すぎたんだ。
彼は変わって、私はそのまま。
もう、どうすることもできない。
何をするにも、あまりにも遅すぎた。
私の恋は、終わったんだ。
Regret and occasional tears
(それは、三年間の片思いの終わり)
本当は両想いだったのに、お互いに勇気がなくて
今まで言えなかったお話。
続きます。